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マツオカ, コウジ

松岡, 浩司

Japanese

Saitama University Cyber Repository of Academic Resources

タミフル耐性インフルエンザウィルス阻害剤の基礎研究 (II) Study of inhibitors for Tamiflu®-resistant influenza virus (II)  プロジェクト代表者：松岡 浩司 (理工学研究科･准教授) Matsuoka, Koji (Grad. Sch. of Sci. & Eng., Assc. Prof.)   1  緒言  インフルエンザウィルスは、宿主のシアル酸を含む糖鎖を受容体として認識し特異的に結合するヘマグルチニン(HA)と自らを受容体から切り離す働きをするシアリダーゼ(NA)を併せもつユニークなウィルスである。このウィルスによる感染は、気道表面の細胞に存在するシアリル糖鎖(図 1 に例示)を認識し、接着、その後取り込まれることにより始まる 1)。現在、インフルエンザによる感冒に対する特効薬として知られているのは、細胞内において増殖したウィルスが出芽し、遊離する際に働くシアリダーゼ(ノイラミニダーゼとも呼ぶ)の阻害剤である 2)。その作用点は、増殖したウィルスが遊離する過程の阻害である。しかしながら、最近の報告によると、それら特効薬は、天然のシアル酸を模倣した化合物であるため、鳥インフルエンザウィルスでさえ、その特効薬に対する耐性菌がすでに出現している 3)。従って、インフルエンザウィルス表面のヘマグルチニン(HA)やシアリダーゼ(NA)が認識する天然型のシアル酸を利用した化合物による対応が必要である。昨年度より、天然のシアル酸自身のウィルス表面にある HA や NA に対する活性が低いので、糖鎖クラスター効果に基づくシアリル糖鎖のクラスター化により、各タンパク質に対する活性の向上を期待した化合物の調製を目的としている。本年度は、ライブラリーの拡張を行った。  OROHOOOOHOHOHOCOOHOHAcHNOHHOOHO HONHAc 図1. インフルエンザウィルスが認識するシアリル糖鎖の一例   2  結果と考察  昨年度に引続き天然由来のシアル酸に対して既知の手法によりチオグリコシド型シアル酸誘導体の合成を行い、アグリコン部に種々の重合性の置換基の導入を行った。(図 2)モノマー合成の際、精製法の改良を行い、SEC により簡便に目的物が単離できることを見出した。また、これらの糖モノマーと酢酸ビニルとを既知のラジカル重合の手法を参考に、ラジカル重合させることにより、直鎖型の糖鎖ポリマー群の合成を達成した。さらに、けん化による脱保護を施し、水溶性のペンダント型の糖鎖ポリマーに誘導した。(図 3)昨年度の化合物(四角で囲った化合物)と同様に、ここで合成した化合物に対してインフルエンザ A 型ウィルス(所謂ソ連型と香港型)に対して、シアリダーゼによる加水分解反応の阻害活性評価を行っている 4)。 HO O O ClDMFNaN3Pyr.MsClOAcOAcHNOAcOAcAcOCOOMeSAc OAcOAcHNOAcOAcAcOCOOMeSOON3 OAcOAcHNOAcOAcAcOCOOMeSOOHNOquant.quant.72% 48%HO O O N3 MsO O O N3NaOMeMeOHOHOAcHNOHOHHOCOOMeSOOHNOquant.0.1 M NaOHaq. OHOAcHNOHOHHOCOOHSOOHNOquant.  図2. ペンダント型糖鎖ポリマーの構築法の例 A型SAα2-3Galβ1-3GlcNAcOOHHOOHAcHNOHCOOHHOORHOOOHNHAcOHOHOOOSAα2-3Galβ1-4GlcNAcSOOHNCHOCH2 CH CH2OHmnOCH CH2 CH CH2OHmnSCH CH2 CH CH2mnH2NOSCH CH2 CH CH2OHmnCHH2NOCH2nSOOHNCHOCH2 CH CH2mnH2NOSSHNCHOCH2 CHOHCH2mnOHOAcHNOHOHHO COOHR=OSHNCHOCH2 CHOHCH2mnOSHNCHOCH2mCHH2NOCH2nSSHNCHOCH2m 図 3. 本研究において合成した化合物群  3  結論  図 3 に示したとおり、シアル酸より重合性のアグリコンを含む種々の糖鎖モノマーを効率良く構築し、それらモノマーと酢酸ビニルとのラジカル共重合反応を行ったところ、目的とする高分子化合物が生成することを見出した。また、得られた化合物の分子量測定を行ったところ、満足のいく重合度の化合物となっていることを確認した。さらに、脱保護法を検討し、水溶性の糖鎖誘導体に変換できることを確認した。現在、これらの化合物のインフルエンザシアリダーゼに対する阻害活性試験を行っている。以上の内容の一部は、学会発表、学術論文により学内外へ広く公開し、特許申請も完了している 4)。  4  参考文献 1) Webster, R.G. et al. ”Encyclopedia of Virology-Influenza virus”, 1994, Academic Press, vol. 2, 709-727. 2) Gubareva, L.V.; Kaiser, L.; Hyden, F.G. The Lancet 2000, 355, 827-835. 3) de Jong, M.D.; Thanh, T.T.; Khanh, T.H.; Hien, V.M.; Smith, G.J.D.; Chau, N.V.; Cam, B.V.; Qui, P.T.; Ha, D.Q.; Guan, Y.; Peiris, J.S.M.; Hien, T.T.; Farrar, J. N. Engl. J. Med. 2005, 353, 2667-2672. 4) (a) Matsuoka, K.; Takita, C.; Koyama, T.; Miyamoto, D.; Yingsakmongkon, S.; Hidari, K. I.P.J.; Jampangern, W.; Suzuki, T.; Suzuki, Y.; Hatano, K.; Terunuma, D. Bioorg. Med. Chem. Lett. 2007, 17, 3826-3830.  (b) 松岡浩司, 照沼大陽, 幡野健, 鈴木康夫, 特開 2008-81411.  (c) 多喜田 智春, 小山哲夫, 幡野健, 照沼大陽, 松岡浩司, 宮本大誠, 左一八, 鈴木隆, S. Yingsakmongkon, W. Jampangern, 鈴木康夫, 側鎖にシアル酸を含む新規水溶性糖鎖高分子の合成研究 (2), 高分子学会第 56 回高分子討論会(名古屋)講演予稿集 1U19, pp. 4980-4981 (2007.9.19).  (d) Sakamoto, J.-I.; Takita, C.; Koyama, T.; Hatano, K.; Terunuma, D.; Matsuoka, K. Carbohydr. Res. 2008, in press.  

タミフル耐性インフルエンザウィルス阻害剤の基礎研究 (II)

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