Article信州公衆衛生雑誌 17(1) : 54-55, (2022)journal articl

塚田, 昌大

宮島, 有果

小林, 良清

西垣, 明子

須藤, 恭弘

Japanese

Shinshu University Institutional Repository

　　　長野県における新型コロナウイルス感染症の流行状況須藤恭弘、西垣明子、宮島有果（長野県健康福祉部）小林良清（長野市保健所）、塚田昌大（松本市保健所）キーワード：新型コロナウイルス感染症、COVID-19、重症度、集団感染要旨：長野県における新型コロナウイルス感染症（COVID-19）は、2020 年 2 月 25 日に初めて確認され、これまで 6 波を経験した。感染者の年代、性別、重症度等について比較した。波を経るごとに感染者は増加し、第 6 波は爆発的な流行を認めたが、重症度が中等症以上の割合は低かった。A．目的　COVID-19 は、国内では 2020 年 1 月 15 日、長野県では 2020 年 2 月 25 日に初めて確認され、これまで 6 波を経験した。各波において、感染者の年代や重症度、集団感染の発生施設に特徴を認めた。これまでの長野県における COVID-19の流行状況について報告する。B．方法　2020 年 2 月 25 日 か ら 2022 年 5 月 29 日 ま でに長野県内で診断が確定した COVID-19 症例、73,148 人（0 歳 ～ 108 歳、 男 性 36,438 人、 女 性36,710 人）を対象とした。発生届、積極的疫学調査 1）等による保健所からの報告に基づき、長野県健康福祉部感染症対策課で作成したデータベースを用いて患者属性等を検討した。解析はオッズ比又はχ二乗又検定を用い、有意水準を 5％とした。用語の定義は以下の通り。（各波の対象期間）第 1 波：2020.2.25 ～ 6.17 ／第 2 波：6.18 ～ 10.31第 3 波：11.1 ～ 2021.2.28 ／第 4 波：3.1 ～ 6.30第 5 波：7.1 ～ 12.31第 6 波：2022.1.1 ～ 2022.5.29（中間報告）（重症度）無症状：無症状病原体保有者／軽症：中等症、重症に当てはまらない症例／中等症：酸素投与が必要であった症例／重症：人工呼吸（挿管）、ECMO 又は ICU 管理が必要であった症例C．結果、考察　COVID-19 症例数は、第 1 波から第 6 波まで順に、76、267、2,021、2,673、3,925、64,186 だった。確保病床使用率のピークは、感染者が最も多かった第 6 波で 44.4％だった（図 1）。【年代・性別】　感染者に占める 10 代以下の割合は、第 1 波から第 6 波まで順に、3.9％、5.6％、10.8％、13.9％、22％、36％であり、第 6 波は第 1 波から第 5 波と比べ有意に増加した。60 代以上の割合は同様に、22.4％、19.1％、29.3％、26.8％、9.0％、12.5％であり、第 5 波では減少したが、第 6 波では再び増加した（図 2）。2021 年 4 月から開始されたワクチン接種およびオミクロン株の感染力が影響したと考えられる。　性別については、第 5 波までは男性が多かったが、第 6 波ではほぼ同数だった（図 3）。【重症度（最重症時）・死亡率】　中等症以上の割合は、第 1 波から第 6 波まで順に、19.7％、15.4％、15.1％、15.9％、10.6％、1.554 信州公衆衛生雑誌 Vol. 17 No. 1, August 2022Shinshu Journal of Public Health  Vol. 17 No. 1,  August 202204-1％だった。第 6 波では肺炎を認めない症例が多く、第 1 波から第 5 波に比べ有意に減少した（図４）。　また、死亡者数は 193 人（男性 125 人、女性68 人）で、死亡率は第 4 波で最も高く 1.87％、第 5 波、第 6 波では 0.15％、全体では 0.26％だった（表 1）。【集団感染】　感染者 5 人以上で集団感染と定義した。第 1波では認めなかったが、第 2 波では飲食店など密になる環境下、第 3 波ではコミュニティー（地域、職場など）を通じた感染、医療機関、高齢者施設での発生を認めた。第 4 波ではアルファ株が流行し、様々な施設で集団感染を認め、学校・教育施設等での発生が増えた。第 5 波ではデルタ株が流行したが、ワクチン接種が進んだこともあり、医療機関、高齢者施設での発生は認めなかった。第 6 波では感染力が強いオミクロン株が流行し、発生件数が第 5 波の約 40 倍に増加した。特に、学校・教育施設等、児童福祉施設で多く発生し、家庭内感染事例も多かった。また高齢者福祉施設での発生も多かった（図 5）。【ワクチン接種による重症化予防】　2022 年 4 月 1 日～ 15 日の間に診断が確定した65 歳以上 679 例のうち、ワクチン接種歴が判明した 294 例についてワクチン接種回数と重症度を分析したところ、３回目接種に比べて未接種と２回接種は中等症以上者が有意に高かった（表 2）。D．まとめ　長野県内では現在までに COVID-19 による流行を 6 波経験した。特に第 6 波では、爆発的な流行を認めた。一方で重症化率は第 3 波をピークに減少した。流行状況にはワクチン接種も影響していると考えられるが、今後さらに分析していく必要がある。E．利益相反　利益相反なし。F．文献1）国立感染症研究所：新型コロナウイルス感染症患者に対する積極的疫学調査実施要領（2021年 11 月 29 日版）G．倫理的配慮　感染症法に基づく疫学調査において収集したデータのみを利用して集計を行い、取扱者も同調査に従事する者に限定した。に、19.7％、15.4％、15.1％、15.9％、10.6％、1.5％だった。第 6 波では肺炎を認めない症例が多く、第 1 波から第 5 波に比べ有意に減少した（図４）。 者数は 19 25 人、女性68 4 1.87％、第 5 波、第 6 波では 0.15％、全体では 0.26％だった（表 1）。 【集団感染】 感染者 5 人以上で集団感染と定義した。第 1 波では認めなかったが、第 2 波では飲食店など密になる環境下、第 3 波ではコミュニティー（地域、職場など）を通じた感染、医療機関、高齢者施設での発生を認めた。第 4 波ではアルファ株が流行し、様々な施設で集団感染を認め、学校・教育施設等での発生が増えた。第 5 波ではデルタ株が流行したが、ワクチン接種が進んだこともあり、医療機関、高齢者施設での発生は認めなかった。第6 波では感染力が強いオミクロン株が流行し、発生件数が第 5 波の約 40 倍に増加した。特に、学校・教育施設等、児童福祉施設で多く発生し、家庭内感染事例も多かった。また高齢者福祉施設での発生も多かった（図 5）。 【ワクチン接種による重症化予防】 2022 年 4月 1日～15日の間に診断が確定した65 歳以上 679 例のうち、ワクチン接種歴が判明した 294 例についてワクチン接種回数と重症度を分析したところ、３回目接種に比べて未接種と２回接種は中等症以上者が有意に高かった(表 2)。 D．まとめ 長野県内では現在までに COVID-19 による流行を 6 波経験した。特に第 6 波では、爆発的な行を認めた。一方で重症化率は第 3 波をピークに減少した。流行状況にはワクチン接種も影響していると考えられるが、今後さらに分析していく必要がある。 E．利益相反  利益  F．文献 1）国症患者に対する積極的疫学調査実施要領 G．倫理的配慮  感染症法に基づく疫学調査において収集したデータのみを利用して集計を行い、取扱者も同調査に従事する者に限定した。 波 第1波 第2波 第3波 第4波 第5波 第6波 計死亡者数（公表日ベース）0 4 37 50 6 96 193県内陽性者数 76 267 2,021 2,673 3,925 64,186 73,148死亡率 0.00% 1.50% 1.83% 1.87% 0.15% 0.15% 0.26%（表1）県内死亡例の状況人数計50代以下 60代 70代 80代 90歳以上2 12 28 62 50 193総数（人） 未接種 １回 ２回 ３回中等症以上者数　a 35 5 0 9 21陽性者数※　b 294 20 0 46 228割合　c=a/b 11.9% 25.0% 19.6% 9.2%＊1：オッズ比 3.29［95％CI＝1.09-9.94］ ＊2：オッズ比 2.40［95％CI＝1.02-5.64］（表2）　　65歳以上の陽性者における中等症患者（ワクチンの接種状況別）＊1＊2（件） に、19.7％、15.4％、15.1％、15.9％、10.6％、1.5％だった。第 6 波では肺炎を認めない症例が多く、第 1 波から第 5 波に比べ有意に減少した（図４）。 また、死亡者数は 193 人（男性 125 人、女性68 人）で、死亡率は第 4 波で最も高く 1.87％、第 5 波、第 6 波では 0.15％、全体では 0.26％だった（表 1）。 【集団感染】 感染者 5 人以上で 第 1 波では認めなかったが、第 2 波では飲食店など密になる環境下、第 3 波ではコミュニティー（地域、職場など）を通じた感染、医療機関、高齢者施設での発生を認めた。第 4 波ではアルファ株が流行し、様々な施設で集団感染を認め、学校・教育施設等での発生が増えた。第 5 波ではデルタ株が流行したが、ワクチン接種が進んだこともあり、医療機関、高齢者施設での発生は認めなかった。第6 波では感染力が強いオミクロン株が流行し、発生件数が第 5 波の約 40 倍に増加した。特に、学校・教育施設等 児童福祉施設で多く発生し、家庭内感染事例も多かった。また高齢者福祉施設での発生も多かった（図 5）。 重症化予防】 2022 4月 1日～15日の間に診断が確定した65 歳以上 679 例のうち、ワクチン接種歴が判明した 294 例についてワクチン接種回数と重症度を分析したところ、３回目接種に比べて未接種と２回接種は中等症以上者が有意に高かった(表 2)。 D．まとめ 長野県内では現在までに COVID-19 による流行を 6 波経験した。特に第 6 波では、爆発的な流行を認めた。一方で重症化率は第 3 波をピークに減少した。流行状況にはワクチン接種も影響していると考えられるが、今後さらに分析していく必要がある。 E．利益相反  利益相反なし F．文献 1）国立感染症研究所：新型コロナウイルス感染症患者に対する積極的疫学調査実施要領 G．倫理的配慮  おいて収集した取扱者も同調査に従事する者に限定した。 波 第1波 第2波 第3波 第4波 第5波 第6波 計死亡者数（公表日ベース）0 4 37 50 6 96 193県内陽性者数 76 267 2,021 2,673 3,925 64,186 73,148死亡率 0.00% 1.50% 1.83% 1.87% 0.15% 0.15% 0.26%（表1）県内死亡例の状況人数計50代以下 60代 70代 80代 90歳以上2 12 28 62 50 193総数（人） 未接種 １回 ２回 ３回中等症以上者数　a 35 5 0 9 21陽性者数※　b 294 20 0 46 228割合　c=a/b 11.9% 25.0% 19.6% 9.2%＊1：オッズ比 3.29［95％CI＝1.09-9.94］ ＊2：オッズ比 2.40［95％CI＝1.02-5.64］（表2）　　65歳以上の陽性者における中等症患者（ワクチンの接種状況別）＊1＊2（件） 55 信州公衆衛生雑誌 Vol. 17 No. 1, August 2022Shinshu Journal of Public Health  Vol. 17 No. 1,  August 2022

長野県における新型コロナウイルス感染症の流行状況

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