内因性抗エリスロポエチン受容体抗体の機能解析

Abstract

金沢大学附属病院当研究室では、貧血の病態の1つとして知られているエリスロポエチン(erythropoietin ; EPO)低反応性に関与する可能性のある新規因子として、貧血患者の血清中に内因性の抗EPO受容体抗体を同定した。また、前年度までの臨床的検討から、ELISA法による抗EPO受容体抗体の吸光度の大きさと患者骨髄中の赤芽球や網赤血球数と相関を認めたことより、同抗体が貧血の病態形成に関与することが示唆された。そこで今年度は、抗EPO受容体抗体の生物学的特性を明らかにする目的で、さらなる生化学的検討に取り組んだ。1)血清からの抗体の精製はじめに、健常血清、疾患コントロール血清および抗EPO受容体抗体陽性の患者血清の精製を行った。血清をろ過した後に、IgGおよびIgM画分をアフィニティクロマトグラフィーで精製した。さらに、精製した低濃度の抗体は膜濃縮器を用いて濃縮した。2)抗体の特異性の検証上記により精製した抗体画分を用い、抗EPO受容体抗体と膜結合EPO受容体の特異的結合を検討した。まずEPO受容体を発現しているヒト白血病細胞株であるAS-E2の膜画分のライセートを作成した。次に精製したIgGまたはIgM抗体を加え、Protein A-sepharoseまたは抗ヒトIgM-sepharoseを用いて免疫沈降を行った。引き続きウェスタンブロッティングで確認した。その結果、抗EPO受容体抗体が陽性の検体では、ヒトFPO受容体の分子量に相当する場所にバンドを認めた。この結果より、抗EPO受容体抗体は細胞膜上のEPO受容体と結合することが示唆された。3)EPO依存性細胞株の増殖抑制試験次に、抗EPO受容体抗体のEPO依存性の細胞株の増殖に及ぼす影響を検討した。ここで用いた細胞はEPOおよびSCFで増殖することが知られているAS-E2細胞である。AS-E2細胞をEPOまたはSCF、および精製した抗体存在下に培養し、培養後の生細胞数を測定した。その結果、抗EPO受容体抗体が陽性の血清から精製したIgGおよびIgM検体はEPO依存性のAS-E2細胞の増殖を容量依存性に抑制することが判明した。なお、正常対照や疾患コントロールの抗体はAS-E2の増殖を抑制しなかった。以上の結果より、抗EPO受容体抗体の生物学的活性が示唆された。以上より、ELISAで検出された抗EPO受容体抗体のEPO低反応性を伴う貧血との関連が示唆された。研究課題/領域番号:23790935, 研究期間(年度):2011出典:研究課題「内因性抗エリスロポエチン受容体抗体の機能解析」課題番号23790935(KAKEN:科学研究費助成事業データベース(国立情報学研究所)) (https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23790935/)を加工して作

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