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    Conflict in the Shadow of Conflict

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    北朝鮮脱出者の文学活動と韓国文壇:「脱北者」による記録文学の現状と課題 資料集

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    2015年秋、韓国で『국경을 넘는 그림자』(国境を超える影)という小説集が刊行されました。北朝鮮脱出後、韓国に定着して作家として活動する6名と、韓国の7名の作家が北朝鮮問題を題材にした作品を書いて、共同で刊行したものです。脱北者の作品は、北朝鮮の内情や脱北過程、韓国での定着過程を外部に知らせる重要な資料です。といってノン・フィクションではありません。北朝鮮の内情を伝えたり、脱北過程を記述した手記は、韓国でも日本でも、また英語圏でもすでにいくつか刊行されています。日本では斉藤博子著『北朝鮮に嫁いで四十年』やリ・ハナ著『日本に生きる北朝鮮人リ・ハナの一歩一歩』があり、英語圏ではHyeonseo Lee著The Girl With Seven Names: Escape from North Korea(邦訳有)や、Yeonmi Park著In Order To Live: A North Korean Girl\u27s Journey to Freedom(邦訳有)がよく知られています。これらの手記は非常に精密で、北朝鮮での生活や、脱北過程の困難をよく伝えてくれます。ただこれらの手記は、様々な場面で類似した記述を持つことも確かです。同じ空間を生きている以上は共通点も多く、公に話せることは既に出尽くした感があります。しかし小説では、公には言えない話、自分の経験としては言えない話を、虚構という仮面を付けて語ることができます。実際、『국경을 넘는 그림자』に収録された脱北者の作品を見ると、手記では語り尽くされていない、北朝鮮に生きる人々の様々な側面が見えてきます。同時に、脱北者がなかなか公言できない、韓国で作家活動をする上での様々な制約や困難も見えてきます。一方韓国の作家は、公式どおりに脱北者と韓国人の関係について描こうとし、同時にそれを書くこと自体が、いかに困難であるかを露呈してしまっています。これは小説ならではのことです。今回、この小説集に参加した4名の方をお招きしました。近年ノーベル文学賞でも、戦争や政治的抑圧下に生きる人々を描いた「記録文学」がキーワードになっています。脱北者による文学も、その受入を描く韓国の文学も、その一事例になり得るものです。この小説集に収録された作品はどれも、文学として優れているとはまだ言えません。今後韓国文壇が「記録文学」のジャンルを慎重に育てて行くのであれば、なかなか国外では理解されない韓国の文学が新たな段階に進む可能性を持っていると私は見ています。日韓対訳資料集イ・ジミョン「불륜의 향기」ト・ミョンハク「책도둑」ソル・ソンア「チノクという女」方珉昊「証言文学、脱北作家、そして『国境を超える影』」国際シンポジウム「北朝鮮脱出者の文学活動と韓国文壇―「脱北者」による記録文学の現状と課題―」, 日程:2016年10月1日(土)14時~18時, 会場:富山国際会議場大手フォーラム会議室20
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